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私たちの診療Tips
当科の診療からの学びをおすそ分けします。適宜更新しますので、お役に⽴てたら嬉しいです!
なお、紹介したエビデンスは⾃分の患者さんに当てはまるかは検討が必要ですのでご注意を。
ステロイドの副作用
・ステロイドを使用するとLDL,HDL,中性脂肪が増加する(Cardiovascular Research 2004;64:217)
低カリウム血症
・βラクタム系抗菌薬によって,尿中K排泄亢進型の低K血症になることがある(J Int Med Res. 2024 ;52:3000605241253447)
CD腸炎
・看護師が患者の状況をわかっていた場合には,便の匂いはCD腸炎に対して感度 55%, 特異度 83%, LR+ 3.24, LR- 0.54(Clin Infect Dis. 2007;44:1142).
・ただし患者情報をマスキングすると便の匂いでCD腸炎は鑑別できない(Clin Infect Dis. 2013;56:615)
ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏
■ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏が疑わしいときは,真の欠乏かを考える.
典型的な血清ビタミンB12値とその解釈[N Engl J Med. 2013;368:149.]
・300pg/mL以上 -正常.欠乏の可能性は低い(感度は約90%とされるが,抗内因性因子[IF]抗体を持つ患者ではこの測定法の感度はそれほど高くないかもしれない).
・200~300 pg/mL –境界域.欠乏の可能性があり追加検査が有用.
・200 pg/mL以下-低値.欠乏症と判断.
典型的な血清葉酸値とその解釈[Am J Med Sci. 1994;308:276.]
・4 ng/mL以上-正常.葉酸は欠乏していないことを示唆している.
・2~4 ng/mL-境界域.臨床的状況や葉酸欠乏を疑う程度によっては追加検査が指示されることがある.
・2 ng/mL未満-低値.葉酸欠乏症.
境界域のとき,メチルマロン酸(MMA;当院では測定できない)またはホモシステインを測定してみると以下のように判断の補助ができる.[Am J Hematol. 1990;34:99.]
・MMAとホモシステインが正常 ―ビタミンB12または葉酸の欠乏はない
・MMA,ホモシステインともに上昇-ビタミンB12の欠乏(葉酸欠乏の可能性は除外できない).
・MMA正常,ホモシステイン上昇 ―ビタミンB12の欠乏なし.
■ビタミンB12欠乏を来す薬剤としてメトホルミン(BMC Pharmacol Toxicol. 2016;17:44),PPI/H2ブロッカー(JAMA. 2013;310:2435)がある
■pseudo TTP
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血でも溶血・破砕赤血球が出現し,TTPのミミックになる(pseudo TTP). 鑑別としてはTTPは網状赤血球が増加するのに対して,pseudo TTPでは減少する.(Cureus. 2023;15:e40212.)
またpseudo TTPではMCVは上昇することが多い.(日内会誌.2019:108:2154)
- 5.疾患別Tips C_内分泌代謝/栄養 ビタミン欠乏
- 2024.09.04
ビタミンB1欠乏
・ウェルニッケ脳症に対するMRIの検査性能は感度53%,特異度93%,LR+ 7.57, LR- 0.51.ただし全体の症例数が30人と少なく,数字の信頼度は低いかもしれない.(AJR Am J Roentgenol. 1998;171:1131.)
・低マグネシウム血症がウェルニッケ脳症の原因になることがある.ビタミンB1がリン酸化されて補酵素になるにはマグネシウムが必要になるから(Lancet. 1999 ;353:1768)
- 5.疾患別Tips C_内分泌代謝/栄養 I_神経/精神 ウェルニッケ脳症 ビタミン欠乏
- 2024.09.02
てんかん
■診断
・PRLが基準値の2倍に上昇することはてんかんの診断に有用かもしれない. (Neurology2005;65:668)
・全般性の痙攣発作では原則的に開眼する.閉眼している場合には他の疾患(心因性非てんかん発作や,失神の持続時間の聴取間違えなど)を考える(問診力で見逃さない神経症状.医学書院 2019)
・てんかんに対しての痙攣頓挫後の脳波の感度は,痙攣から時間が経過するにつれて落ちる.24時間以内の場合は62%,25~48時間の場合は51%,49~72時間の場合は40%,72 時間を超えると 31 %だった(J Clin Neurophysiol. 2017 ;34(5):434-437)
・非けいれん性てんかんではNH3は上がらない(Epilepsia 2011;52:2043)
■腹部てんかん
典型例は鋭い,疝痛様の痛み.
場所は臍周囲,上腹部(心窩部,右上腹部)が多い.
持続時間は数分以内が多いが1時間以上続くことも報告がある.
随伴症状は嘔気,下痢などの他の症状を伴うこともある.
発作後の倦怠感/疲労感,眠気は1/3程度,ちょっとした意識障害が6割,意識障害や痙攣発作は3割,頭痛は1割強.
毎回同じ症状とは限らない.
脳波は発作間欠期にも異常があることが多いが,特異的ではない.
鑑別診断は同じように発作的な腹痛をきたす,ポルフィリン症,家族性地中海熱,周期性嘔吐症,腹部片頭痛.
腹部片頭痛は臍周囲か局在の伴わない漠然とした鈍い痛みで,1時間以上,1-2日続く点で鑑別.
治療は抗てんかん薬
(Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2005 Apr;19(2):263-74)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
■pseudo TTP
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血でも溶血・破砕赤血球が出現し,TTPのミミックになる(pseudo TTP). 鑑別としてはTTPは網状赤血球が増加するのに対して,pseudo TTPでは減少する.(Cureus. 2023;15:e40212.)
またpseudo TTPではMCVは上昇することが多い.(日内会誌.2019:108:2154)
- 5.疾患別Tips F_血液 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
- 2024.08.30
腎性貧血
・貧血(Hb 男 12g/dl未満,女 11g/dl未満)の合併率は,eGFR 60 ml/1.73 m2で1%, eGFR 30 ml/1.73 m2で9%, eGFR 15 ml/1.73 m2で男性 33%,女性 67%だった(Arch Intern Med. 2002 ;162:1401-8)
心不全
■治療
心不全での入院患者では水分制限群でむしろ30日後のうっ血が多い. (JAMA Intern Med. 2013;173(12):1058)
HFpEFにβ遮断薬が死亡率を下げるというSRが出た(Heart.2018;104:407-415)
脂質異常症の患者ですでにスタチンを飲んでおりTGが高い人がEPAを飲むと心血管リスクが下がる(NEJM.2019;380:11)
■その他
・慢性心不全の予後予測ツールがある.Seattle Heart Failure Model では1,2,5年,MAGGIC Heart Failure Score では1,3年死亡率を予測することができる.( Eur Heart J. 2013,34:1404. / Circulation. 2006,113:1424 )
・肥満だとBNPが低くなる
重症度を揃えたHFrEFの人で,BMI<25, BMI 25-30, BMI>30でBNPはそれぞれ 747, 380, 332 pg/mlだった( J Am Coll Cardiol. 2006 ;47:85-90)
家族性地中海熱
・日本の高齢発症FMFでは若年発症例よりも腹痛や胸痛が少なく,関節痛や筋痛が多い(Arthritis Res Ther. 2018 ;20:257).この研究での高齢発症FMFの年齢の中央値は50歳.
- 5.疾患別Tips E_免疫/アレルギー/膠原病 家族性地中海熱
- 2024.06.03
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