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私たちの診療Tips
当科の診療からの学びをおすそ分けします。適宜更新しますので、お役に⽴てたら嬉しいです!
なお、紹介したエビデンスは⾃分の患者さんに当てはまるかは検討が必要ですのでご注意を。
パーキンソン病
■症状
起立性低血圧などの自律神経症状は運動症状の発症に先行することがよくある(J Neurol NeurosurgPsychiatry.2013; 84:674)
■診断
・DaTscanはパーキンソン病,DLB,PSP,MSAなどでは集積低下するが,薬剤性パーキンソニズムや血管性パーキンソニズムでは正常所見になる(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010;81:5.)
・DaTscanの集積低下所見はパーキンソン病と薬剤性パーキンソニズムや血管性パーキンソニズムを鑑別するのに役立つ.所見がある場合はパーキンソン病に対して感度 85%, 特異度80%, LR+ 4.25, LR- 0.19 (Eur J Neurol. 2014;21:1369)
■治療
・パーキンソン病治療薬のL-ドパとマグネシウムは同時に使うとL-ドパの効果が減弱する.薬剤の化学変化で黒色になる.黒色嘔吐した場合に吐血の鑑別になる(練馬光が丘病院 松本 朋弘先生の金言).鉄剤併用でも効果減弱する.それらを防ぐために2時間以上あけて使用する
ビタミンB1欠乏
・ウェルニッケ脳症に対するMRIの検査性能は感度53%,特異度93%,LR+ 7.57, LR- 0.51.ただし全体の症例数が30人と少なく,数字の信頼度は低いかもしれない.(AJR Am J Roentgenol. 1998;171:1131.)
・低マグネシウム血症がウェルニッケ脳症の原因になることがある.ビタミンB1がリン酸化されて補酵素になるにはマグネシウムが必要になるから(Lancet. 1999 ;353:1768)
- 5.疾患別Tips C_内分泌代謝/栄養 I_神経/精神 ウェルニッケ脳症 ビタミン欠乏
- 2024.09.02
てんかん
■診断
・PRLが基準値の2倍に上昇することはてんかんの診断に有用かもしれない. (Neurology2005;65:668)
・全般性の痙攣発作では原則的に開眼する.閉眼している場合には他の疾患(心因性非てんかん発作や,失神の持続時間の聴取間違えなど)を考える(問診力で見逃さない神経症状.医学書院 2019)
・てんかんに対しての痙攣頓挫後の脳波の感度は,痙攣から時間が経過するにつれて落ちる.24時間以内の場合は62%,25~48時間の場合は51%,49~72時間の場合は40%,72 時間を超えると 31 %だった(J Clin Neurophysiol. 2017 ;34(5):434-437)
・非けいれん性てんかんではNH3は上がらない(Epilepsia 2011;52:2043)
■腹部てんかん
典型例は鋭い,疝痛様の痛み.
場所は臍周囲,上腹部(心窩部,右上腹部)が多い.
持続時間は数分以内が多いが1時間以上続くことも報告がある.
随伴症状は嘔気,下痢などの他の症状を伴うこともある.
発作後の倦怠感/疲労感,眠気は1/3程度,ちょっとした意識障害が6割,意識障害や痙攣発作は3割,頭痛は1割強.
毎回同じ症状とは限らない.
脳波は発作間欠期にも異常があることが多いが,特異的ではない.
鑑別診断は同じように発作的な腹痛をきたす,ポルフィリン症,家族性地中海熱,周期性嘔吐症,腹部片頭痛.
腹部片頭痛は臍周囲か局在の伴わない漠然とした鈍い痛みで,1時間以上,1-2日続く点で鑑別.
治療は抗てんかん薬
(Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2005 Apr;19(2):263-74)
椎骨脳底動脈解離
・椎骨脳底動脈解離は運動を誘引とするが,頭痛症状自体も頭部の動きで悪化する(Headache 1994;34:187)
びまん性レビー小体型認知症
・びまん性レビー小体型認知症のパーキンソニズムは幻視や認知症の後から出現することが多い.(Continuum (Minneap Minn). 2016;22(2 Dementia):435-63.)
- 5.疾患別Tips I_神経/精神 びまん性レビー小体型認知症
- 2023.08.16
脳梗塞
■症状
・椎骨脳底動脈系のTIAでは真性めまい(回転性めまいなど)と前失神・失神が併存することがある(問診力で見逃さない神経症状.医学書院 2019)
・AICA梗塞は38%でHIT陽性になる.しかし99%に脳幹・小脳症状を伴い,蝸牛症状を95%で伴うので前庭神経炎と区別しやすい(J Clin Neurol.2009;5:65)
■診断
・脳梗塞の発症3時間未満でのMRIの感度は73%である. (Lancet 2007;369:293)
■治療
・脳梗塞で入院中の糖尿病の血糖管理目標は食前140,食後180未満とすべきかもしれない. (Stroke.2019;50.e440)
・スタチンを常用している脳梗塞患者が, スタチン内服を中断すると死亡率が上がるかもしれない. (Neurology.2007;69:904)
・tPAの効果はNNTでは7人治療すると1人が改善する/17人治療すると1人で頭蓋内出血の副作用が起こる. RRでは, 何もしないのと比べると改善する確率が2倍になる/何もしないのと比べると頭蓋内出血の副作用が10倍になるかもしれない. (Stroke.2019;50.e440)
・DOAC内服中の脳梗塞発症時の休薬期間はTIA 1日,無症状の小梗塞 3日,中等度の梗塞 6日,大梗塞は2-3週間がよいかもしれない. (international j of stroke.2014:9:627 )
・長期間の抗凝固療法は大梗塞の場合は,出血転化のリスクから発症2-3週後の方がいいかもしれない.大梗塞はMCA,ACA,PCA本幹が詰まったものや,NIHSS 15点以上がおおよその基準になる(UpToDate>Antithrombotic treatment of acute ischemic stroke and transient ischemic attack.2021/1月参照)
・若年,NIHSS高スコア,画像でMCA領域の50%以上の梗塞巣は脳ヘルニアなどの高度の脳浮腫のハイリスク集団である(Stroke. 2018;49:2918).発症から48時間は抗血栓薬は避けるのがよさそう(UpToDate>Malignant cerebral hemispheric infarction with swelling and risk of herniation.2023/4/11閲覧).
・ハイリスクTIA(ABCD 2スコアが4以上)または軽度の虚血性脳卒中(National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアが3以下)の患者に対して,アスピリン(毎日81 mg)とクロピドグレル(300 mgの負荷量→続いて毎日75 mg)を24時間以内に開始し21日間併用する早期開始および短期(21日)DAPT療法を行うと,90日の時点で,アスピリン単独と比較して非致命的な再発性脳卒中のリスクを軽減するかもしれない(6.3対4.4%、相対リスク[RR] 0.70、95%CI 0.61-0.80、絶対リスクの低下1.9%).(UpToDate>Antithrombotic treatment of acute ischemic stroke and transient ischemic attack 2020/5 閲覧)(BMJ. 2018;363:k5108)
■その他
・脳梗塞後抑うつ状態は, 脳梗塞患者の30%に起こる.左側の梗塞,前大脳動脈の梗塞で多い. (UpToDate>Complications of stroke: An overview(2020/3))
・原因としてのPAFは原因不明の脳梗塞患者にモニターを続けたところ,90日間で16.1%に発見された(N Engl J Med. 2014; 370: 2467-77)
・脳梗塞発症後の1年後の死亡率,30日後の機能予後不良はiSCOREで予測できる(Circulation 2011;123:739,Stroke 2011 ;42:3421)
・悪性腫瘍では心筋梗塞や脳梗塞を含む急性動脈血栓症の発症リスクも上昇する.中でも, 癌の診断直後や肺癌と膵臓癌では最もリスクが高い(Thrombosis Research 2019 ;184:16).
・脳梗塞ハイリスク患者に植込み型ループレコーダーを装着しても,心房細動は多く発見できた(3年で32%)が,抗凝固薬導入による塞栓症の予防効果までは示されなかった(Lancet. 2021;398:1507-1516)
髄液蛋白細胞解離
髄液蛋白細胞解離が起こる疾患,病態(BMJ Open. 2019 Feb 13;9(2):e025348.)
・ポリニューロパチー
・腫瘍
・脳炎(感染,傍腫瘍,自己免疫)
・痙攣
・脳室シャント
・中枢神経の奇形
・脊髄症
・水頭症
・外傷(脳外科術後,びまん性軸索損傷)
・感染症(中枢以外)
・中枢神経血管炎
・神経の炎症
・静脈洞血栓
・髄膜疾患(癌,IgG4など)
・髄液漏
・脳症
・3ヶ月以内の脳出血
・多発単神経炎
・神経毒(ヘロインなど)
・無菌性髄膜炎
・特発性頭蓋内圧亢進
・高血圧脳症
・全身性の炎症
・脊髄疾患
・髄内化学療法後
・脱髄疾患
・視神経疾患
・脳卒中
・炎症性白質疾患
・神経叢障害
・遺伝性神経疾患
・運動ニューロン疾患
・ミオパチー
・脳神経障害
ALS
ALSの初期では80%が非対称性の筋力低下のパターンになる.その後60~70%が特徴的な拡大の仕方をする.右上肢→左上肢→右下肢→左下肢→嚥下,や左下肢→右下肢→左上肢→右上肢→嚥下というようになる(UpToDate>Clinical features of amyotrophic lateral sclerosis and other forms of motor neuron disease. 2022/9月閲覧).Z字のようになる.
薬物乱用頭痛
・鎮痛薬は漸減中止よりも一気に中止の方がよい(UpToDate>Medication overuse headache: Treatment and prognosis. 2020/5月閲覧)
・鎮痛薬中止後症状が改善するまでに,2-10日間ほど離脱症状として頭痛は悪化する(UpToDate>Medication overuse headache: Treatment and prognosis. 2020/5月閲覧)
レビー小体型認知症
・認知症患者ではMIBG心筋シンチでの集積低下はDLBに対してSn 95%, Sp 87%, LR+ 7.3, LR- 0.06(Dement Geriatr Cogn Disord.2006;22:379 )
・DaTscanはパーキンソン病,DLB,PSP,MSAなどでは集積低下するが,薬剤性パーキンソニズムや血管性パーキンソニズムでは正常所見になる(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010;81:5.)
- EBMを実践したい方
- 「患者全体を診る」診療医師を目指している方
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- 病院総合診療医を目指している方
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