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私たちの診療Tips
当科の診療からの学びをおすそ分けします。適宜更新しますので、お役に⽴てたら嬉しいです!
なお、紹介したエビデンスは⾃分の患者さんに当てはまるかは検討が必要ですのでご注意を。
ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏
■ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏が疑わしいときは,真の欠乏かを考える.
典型的な血清ビタミンB12値とその解釈[N Engl J Med. 2013;368:149.]
・300pg/mL以上 -正常.欠乏の可能性は低い(感度は約90%とされるが,抗内因性因子[IF]抗体を持つ患者ではこの測定法の感度はそれほど高くないかもしれない).
・200~300 pg/mL –境界域.欠乏の可能性があり追加検査が有用.
・200 pg/mL以下-低値.欠乏症と判断.
典型的な血清葉酸値とその解釈[Am J Med Sci. 1994;308:276.]
・4 ng/mL以上-正常.葉酸は欠乏していないことを示唆している.
・2~4 ng/mL-境界域.臨床的状況や葉酸欠乏を疑う程度によっては追加検査が指示されることがある.
・2 ng/mL未満-低値.葉酸欠乏症.
境界域のとき,メチルマロン酸(MMA;当院では測定できない)またはホモシステインを測定してみると以下のように判断の補助ができる.[Am J Hematol. 1990;34:99.]
・MMAとホモシステインが正常 ―ビタミンB12または葉酸の欠乏はない
・MMA,ホモシステインともに上昇-ビタミンB12の欠乏(葉酸欠乏の可能性は除外できない).
・MMA正常,ホモシステイン上昇 ―ビタミンB12の欠乏なし.
■ビタミンB12欠乏を来す薬剤としてメトホルミン(BMC Pharmacol Toxicol. 2016;17:44),PPI/H2ブロッカー(JAMA. 2013;310:2435)がある
■pseudo TTP
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血でも溶血・破砕赤血球が出現し,TTPのミミックになる(pseudo TTP). 鑑別としてはTTPは網状赤血球が増加するのに対して,pseudo TTPでは減少する.(Cureus. 2023;15:e40212.)
またpseudo TTPではMCVは上昇することが多い.(日内会誌.2019:108:2154)
- 5.疾患別Tips C_内分泌代謝/栄養 ビタミン欠乏
- 2024.09.04
ビタミンB1欠乏
・ウェルニッケ脳症に対するMRIの検査性能は感度53%,特異度93%,LR+ 7.57, LR- 0.51.ただし全体の症例数が30人と少なく,数字の信頼度は低いかもしれない.(AJR Am J Roentgenol. 1998;171:1131.)
・低マグネシウム血症がウェルニッケ脳症の原因になることがある.ビタミンB1がリン酸化されて補酵素になるにはマグネシウムが必要になるから(Lancet. 1999 ;353:1768)
- 5.疾患別Tips C_内分泌代謝/栄養 I_神経/精神 ウェルニッケ脳症 ビタミン欠乏
- 2024.09.02
色々欠乏症
・銅欠乏による脊髄障害は頚髄,胸髄に起こる.MRIで異常が出ないこともある(UpToDate>Copper deficiency myeloneuropathy 2022/3/19閲覧)
・銅欠乏は亜鉛補充によって吸収が競合され起こることがある(UpToDate>Copper deficiency myeloneuropathy 2022/3/19閲覧).そのため銅欠乏の治療では亜鉛を止めることも入る.
・銅欠乏の治療は日本では薬剤がなく,ココア飲用する.まずは1日8mgの元素銅補充する(UpToDate>Copper deficiency myeloneuropathy 2022/3/19閲覧).ココアは銅 0.9mg/1袋(もちろん製品による)なので1日8杯からを目安にする.
・カルニチン欠乏は日本人の血液透析患者で4年以上透析を受けていると特に起こりやすい(Nutrients. 2020 ;12:3371).症状としては筋力低下,心機能低下,透析中の血圧低下,貧血などがあり,治療で改善することがある(Seminars in Dialysis 2001; 14,: 209).また低血糖を起こす報告もある(Intern Med .2016;55:365)
ウェルニッケ脳症
・ウェルニッケ脳症は臨床診断.
頭部MRIの中脳水道周囲,第三脳室周囲,蓋板,乳頭体,視床内側に認められる対称性の異常信号はSn 53%, Sp 93%,LR 7.6/0.5(Am J Roentgenol. 1998;171:1131)
- 5.疾患別Tips C_内分泌代謝/栄養 ビタミン欠乏
- 2021.07.13
- EBMを実践したい方
- 「患者全体を診る」診療医師を目指している方
- 総合診療科が確立している体制の上で医師として活躍したい方
- 病院総合診療医を目指している方
- 家庭医として地域で活躍したい方
- 離島やへき地の診療所で活躍したい方